新聞勧誘の手口

「ピンポーン」という音がなった。
別に何か正解したわけではない。むしろ間違いだらけの人生を送っている。

まぁそれはそれとして、インターホンが鳴った。現在の私なら、頼んでもないのに訪ねてくるのは、宗教の勧誘か、プロバイダの勧誘か、あるいは新聞の勧誘…要するに何らかの勧誘しかないのは分かっているので、怪しいっぽい人だったらドアを開けない。しかし、当時の私はまだ純粋で、来るものは拒まずのスタイルをとっていた。

男「〇〇〇〇です!」

これは別にプライバシーに気を遣っているわけではなく、実際に聞き取れなかったことを表している。もう一回聞き返せばよかったのだが、私自身も喋った内容が相手に伝わらないことがあるので、何度も聞き返される辛さは分かっている。とりあえず、相手が何者か分からないまま会話をすすめることとした。しかし今考えれば、これもわざと聞き取れないように喋っていたのだろう(多分)。

男「うち、いまキャンペーンやってるんですよ」
私「はぁ」
男「いまならビール1ケースプレゼントしますよ」
私「え、ビールくれるんですか」
男「ええ、どうぞどうぞ持ってってください、この紙にサインさえいただければ」

サインするだけでビール1ケースくれるなんて、なんか知らんけどキャンペーン万歳! と思いつつペンを握ったが、紙をよく見ると、そこには某有名新聞社の名前が(ここではじめて新聞の勧誘だと気づいた)。

私「え、新聞はちょっと…」
男「いやいや、そんなこと言わずに。とりあえず3ヶ月だけとっていただければいいんです。さらに今ならキャンペーンで"最初の月"は無料ですから」
私「むむ…」

私は足りない頭をフル回転させて、「最初の1ヶ月無料ってことは、料金は2ヶ月分でよくて、さらにビール1ケースならこれは結構お得ではないか?」と考えた。そこでさらに、

男「僕、最近契約取れなくて、クビになりそうなんですよ。だからお願いしますよ;;」
私「むむむ…」

情け深いことで有名な私は、このひと押しに負けて契約してしまった。まぁ人生において新聞の契約をする経験も必要であろう。

しかしここに二つの誤算があった。一つ目は、「最初の一ヶ月無料」ではなく、「最初の月は無料」であったことである。契約したのが9月27日(忘れもしない)だったので、無料期間はなんと3日だけであった。

二つ目はビールが「金麦」だったこと。金麦はビールとは認めていない(違いがわかる人なのだ)。

そして最後に、3ヶ月後の契約更新の際には、歯がすべて抜け落ちているスゲー怖い人が家に来たことも付け加えておかねばなるまい。